移民なき時代へ人材争奪 日経新聞の記事について

2021年12月6日 日経新聞に「人口と世界」シリーズとして移民について世界の取り巻く事情について大きく掲載されました。月曜の朝刊一面に大々的に掲載されるトピックスとしては非常に珍しいと感じ、この記事について私見ではございますが、少しコメントさせていただければと思います。

2020年3月頃から長期にわたるコロナ渦を経て、国境間の移動がほぼ止まったことにより、グローバルで人材流入や移動がなくなり、結果経済へのダメージが顕著になった事は今後の人口政策および経済政策にも大きく影響を与えたと感じています。記事を拝見して各国担当記者によって多様な面を調査し非常に興味深いデータと感じましたが、この記事の意義は、やはりグローバルの中において「日本はどんな方向へ向かうべきか」という事を日本の皆様へ問いかけている点と思います。

コロナ、という世界共通の苦境を体験し、ますます各国はいかに人口政策が重要か、という点を痛感しました。観光を主な産業とする国々は悲劇的なダメージをうけ、国によってはよりクリエイティブなビザを考案し、長く滞在してもらうことにより経済効果へのインパクトを期待する、という流れも始まりました。

  • 人の移動が止まることにより観光業へのダメ―ジ ⇒これを打開するために仕事を持った人を受け入れる「リモートワークビザ」(UAE)「ノマドビザ」(エストニアなど)の導入

記事の中でデータもありましたが、あらためて、オーストラリアは先進国の中でも移民による人口増加比率が圧倒的トップであり、日本は比較してかなり深刻な状況です。きっとこの事実には多くの方が認識していますが、ではどうやって?という点で、具体的な政策がみえないのが実情です。

日本は本当にどのような方向に進みたいのか、人口、特に労働人口を真剣に増加するように検討しているのか?これが最重要課題と感じています。女性の活躍、そしてリタイア年齢を上げる、という事は多く語るものの、統計から予測しても「自然増」からの数字に限界があることは明白な状況でもあり、もっと10年後、20年後をみすえて現実的な視点を持ってほしいと願います。コロナの影響から各国もまれにみる人口減少がみられ、かなり深刻に報道されていましたが、日本はもう何年も前から20万人以上の人口減がとりだたされている、にも関わらず、その方策は全く追いついていないのが現実です。

各国にどのようなビザのクラスがあり、どのように誘致し、居住してもらうように促しているか、という点を真剣に研究する必要があり、重要なのは「一時的な労働者」=低賃金労働者として検討するのではなく、一緒に国を作り、経済促進していける共存者として検討し、いつかは日本のファンになってもらう事が重要で、ともに国もその社会やインフラをつくる覚悟をすることが非常に重要であります。残念ながら今の日本の現状は大半の「就労者」=一時的労働力として検討する割合が圧倒的な数を占める、という先進国では非常にまれな状況です。(以下参考:厚生労働省『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和元年10月末現在)』)

 

移民政策を徹底しているオーストラリアから学べる点は大変多くあり、高度人材誘致はもちろん重要ですが、加えて通常ビザクラスの観点からも最もハードルの低い観光ビザ、学生ビザ、そしてワーキングホリデーなど、観光立国でもあるオーストラリアの政策を研究することからヒントは多くあり、もっと日本には実践してほしいと願います。

  • どうしたら労働人口がふやせるか
  • どうしたら若い人に多く滞在してもらえるか
  • どうしたら日本に長期滞在してもらえるか、地方の経済活性化へつなげられるか

日本はまだまだ自国が想像する以上に海外からみれば、手続き面でも「ハードルの高い」国と感じている外国人が多いと思います。シンプルにかつシステマティックにするためにもビザ申請のオンライン化を進め、「ビザの改良=経済促進へつなげる」しくみをつくる事が長期的にも有益な政策となります。

これからの時代は、「Welcome to Japan」を広報し、「具体的なビザプログラム」を誘致することで、よりよい外国人の誘致につながると思います。

コロナの体験は全世界の人が「場所にこだわらない働き方」を実践し、新しいライフスタイルを見出した点がこれからの社会に非常に大きな影響をあたえると思います。

これは優秀な人であればあるほど、どこでも働き、経済力があり、生活できる為、そのような人たちに日本を選んでもらえるような政策も検討が必要と思われます。日本政府が考えている以上に世界はもっと迅速にこれらの人材獲得競争に危機感をもち、そして行動し、政策を次々とうちだしているのが現実です。世界で最も高齢化が進んでいる日本で、この人口政策についての深刻さをどのくらいの方が感じているか、非常に危惧するところです。

オーストラリアは統計からも明確であるとおり、移民政策による人口増政策が世界で最も積極的な国となっています。日本は全てをお手本にすることは不可能と思いますが、日豪政府はこれまでにない良好な外交・経済関係を維持しています。ビジネスのみならず、人口政策においても活発な意見交換をする事で日本にもあらたなしくみができると感じています。

また、オンライン化する=というのはつまり、自国の雇用創出につながる、という事です。オーストラリア政府は1996年に世界で初めてのオンラインビザETAを開発して以来、段階的にビザ申請をオンライン化する事で、自国の各地方都市で世界中のビザ審査をするまでになりました。こうした取り組みは参考になる点は多々あり、各ビザクラスの審査の統一化、そして何よりもデータベースが集積できる有益性があり、審査の観点からも分析しやすくなります。

私たちはコロナ渦で多くの事を学びました。ぜひ日本には具体的人口政策を提示してほしいと真に願います。